ただ、君の隣にいたいだけ
亮輔さんは今、必死で庄野くんを育てようとしてる。最近の口癖は「俺を早く超えろ」その口癖を聞くたびに胸が締め付けられる。もうすぐ、こうやって毎日亮輔さんの顔を見ることも出来なくなるんだって。


振られた。それなのにちっとも諦められない。会えば会うたび好きになる。だから認めてほしい。頑張ってるな。少しは良くなってきたよ。そんな些細な言葉でもいいから掛けてほしい。


でも、認められるわけもない。



「肩、昨日も言っただろ?また上がっ
てる。上半身でアクションするなって何度言えば分かるんだ」



アクションの基本は肩を上げないこと。上半身でアクションをしないこと。何度も何度も亮輔さんには注意されている。自分では肩の力を抜いているつもりなのに全く抜けていない。


焦るな、コントロールしろ。やっています。そう、抗議だってしたいのに結局は出来ていない。出来ていないことが理解できていない。致命的だったりする。


だからそんなときに優しく声を掛けてくれる拓馬くんは私の救世主でもあるんだ。



「大丈夫、大丈夫。俺だってまだ全然だって。それに最初から出来るもんでもないだろ。一緒に向上していこうぜ」



その言葉で頑張れる。一緒に頑張っている仲間がいてくれるだけでもっともっと向上したくなる。だから練習後に拓馬くんと居残り練習をすることも増えてきた。


今日も居残り練習。本番まで後、三週間。一時も手を抜けない。今日は本番に使うマスクを見せてもらった。被るとほとんど見えない。


戦隊ものなどのマスクの視界はゴーグル部分に空気を通す穴が空いてるだけ。そこから呼吸をしつつ、視界を確保する。
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