ただ、君の隣にいたいだけ
「そ、そういえば、拓馬くん遅いですね。もう、帰ってきてもいい頃なのに」


気を逸らそうとそんな言葉がついてでた。そうだ。拓馬くん、もう帰ってきてもいいはず。どうしたのかな?何かあったのかな?彼女と電話で話したのかな?



「・・・なんだよ、それ」



「えっ?」



「俺のことだけ考えてろよ」



「り、亮輔さん?!」



いつもとは確実に違う亮輔さん。怖くなって見えないまま後ずさりする。後ろに障害物があるかもしれない。でも、下がらずにはいられない。



「なんで、逃げるの?もうどうでもいい?なんで毎日、そんなに笑っていられる?楽しんでいられる?俺が、俺がどんな気持ちで花菜ちゃんの告白を断ったと・・・」



「えっ?」



今、なんて言ったの?
どんな気持ちで断った??


私のこと好きじゃないからでしょ?恋愛対象には見られないから、傷つけたと思ったから距離を置いて家まで出て行ったんだよね?



「もう、逃げられないね。まあどうせほとんど見えないんだから逃げ場なんてないけど。それに、あいつは帰ったよ。だから来ない。助けを求めてもここじゃ聞こえない。だから、何してもいいよね?」



どうして?どうしてそんなに今日は感情的なの?亮輔さんの言うようにもう下がれない。トンと私の背中は壁にぶつかった。逃げ場なんてない。


だけどどうしてだろう。さっきまでは怖いと思っていた亮輔さんが今は怖いという気持ちよりもどんな表情でそんなことを言ってるのか知りたい。



だからマスクに手を掛けそれを外した。
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