ただ、君の隣にいたいだけ
木曜日、いつもの自主練習終わりに事務所に借りた小道具を返しに行こうとしたら中から亮輔さんと河島さんの話し声が聞こえてきた。聞き耳を立てるつもりはなかったけれどなんとなく入りづらい。


玄関では拓馬くんや亮輔さんに言われてからは自主練習に付き合ってもらってる愛梨さんが待ってくれている。早く入って返さなくちゃ待たせてしまうのに。



「あれ?」



中に入ろうと躊躇していた私の姿を見つけた河島さんと目が合った。河島さんの声に反応して亮輔さんも振り向く。


気まずいな。でも返さないわけにはいかないから返しに来ましたと愛想笑いで中に入り、借りた小道具を元の場所に戻す。


「どうだ?誰か心当たりありそうか?」



「みんな、なかなか捕まらなくて。まあいいです。いざとなれば漫画喫茶かどこかで過ごしますから」



「そうだ、相原さん。確か実家だったよな?亮輔、相原さんのところはどうだ?相原さんは亮輔の紹介で来たわけだし、知らない仲でもないだろ?」



「いや、でも・・・」



ゴソゴソと小道具を直す私を見ながら河島さんと亮輔さんが話している。気がつかない振りをしてさっさと立ち去ったほうがいいかもしれないな。


お先に失礼しますと声を掛けようとしたら河島さんに相原さんと声を掛けられてしまった。



「悪いんだけどしばらく亮輔を泊めてやってくれないかな?こいつ、シェアハウスしてたやつが女連れ込んで行き場ないからってうちに来てたんだけどうちのチビが熱出てさ。さすがに亮輔に移すわけにはいかなくてさ。相原さんなら知り合いだろうし、どうかな?」



「河島さん!大丈夫ですよ。俺なら他に・・・」


「全然いいですよ。ぜひうちに来てください」
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