ただ、君の隣にいたいだけ
「・・・ごめん、待たせて。雨、降ってるから事務所の車借りて帰れって河島さんに言われてさ。とりあえず駐車場行こうか」



「えっ?亮輔さん、運転できるんですか?」



全くイメージがなかったからそんな言葉が飛び出た。だって、車に乗るイメージなんてない。

移動手段は自転車か電車ばかりだったから。私の言葉に少しだけムッとした顔を向けた亮輔さん。


「あのね、俺、昔は営業で毎日車乗ってましたよ。確かに最近は乗る機会なかったけど感覚は覚えてるから大丈夫」



最近は乗ってなかった?その発言、何気に不安を煽るんですが。だって乗ってなかった人がいきなり乗るわけでしょ?しかも、こんな雨の中。


大丈夫かな。スリップとかしないかな。電車で帰ったほうが安全じゃないかな。気になり始めるとどんどんと不安ばかり募る。そんな私にお構いなしで亮輔さんはどんどんと歩みを進める。



「あの、本当に大丈夫ですか?その、電車で帰ったほうが・・・」



事務所の名前が書かれた白い車に乗せられるもまだ不安が後を立たない。心配しなくても大丈夫だという亮輔さんは慣れた手つきを見せようとエンジンを掛ける。だけどどこかおぼつかない様子にまた一層募る不安。


ああ、私が車を運転出来れば良かったのに残念ながら私は免許を持ってない。
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