ただ、君の隣にいたいだけ
身内よりも赤の他人を優先するなんてお母さんまで手名付けたな。むくれる私を差し置いて自転車を用意するタラシ。


あーもう悔しいな。絶対に抜いてやる。



一台はママチャリ。前の席には明海が乗れる椅子が付いてる。もう一台はカゴなし自転車。荷物は置けないけれどかなり軽い。


どちらが早いかなんて一目瞭然。
こんなやつに負けてたまるか。



「おにい、きょうもナイトレンジャーのうた、うたってくれる?」



「いいよ、明海は本当ナイトレンジャーが好きだよね」



「うん、オレ、ナイトレンジャーになりたい。ナイトブルーがすきなんだ。このあいだばあちゃんとゆうえんちにいったときにあくしゅしてもらったんだぜ」



自転車置き場から自転車を出そうとしていたらキラキラした瞳で明海がナイトレンジャーの話をする。握手したってまさかとチラリと彼の顔を見るとニコッと笑う。やっぱり彼か。


でも、明海がそこまで憧れるんだな。ナイトレンジャーか。今の戦隊モノなんて全然知らない。でも、明海と話したいし、ちょっとだけ見てみてもいいかな。



「じゃあとりあえず、林原海岸まで行こうか。今からなら30分くらいで行けそうだしね」



「おー!いこう。オレ、おかしほしい」



「うん、松田屋で買ってから行こうか」



まるでいつも行ってるかのようで私は一人疎外感を感じる。あぁー私があっちで腐ってた頃に二人は仲良くなったんだな。


明海は私の大事なボーイフレンドだったのに取られた気がして悔しい。


やっぱりこの男、好きになれない。
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