ただ、君の隣にいたいだけ
「ちょ、ちょっと何するんですか?」



「付き合ってくれたお礼。それと俺の名前はタラシじゃなくて亮輔。おばさんと話すときくらいは名前で呼んでね」



聞こえていたのか。タラシとはもう呼べないな。彼、亮輔さんは私のカゴと明海のカゴを持ってレジに行く。


本当ならすぐに奪い返すもんなんだろうけれど小銭がなかったからお言葉に甘えることにした。



「よしっ、お菓子も買ったし海岸行こうか」



「うん、おにいおかし、ありがとう」



「明海は偉いなあ、ちゃんとありがとうが言えるんだもんな」



「あ、ありがとうございます」



松田屋を出て、自転車に乗る。当たり前じゃない。明海は賢いんだから。でもチラリと私を見られたから一応お礼は言った。やっぱりやりづらい。



「あの、私も明海と話したいです。自転車代わってもらえませんか?」



「んー途中で交代しようか。明海、それでいいか?」



「うん、いいよ」



腑に落ちないけれど結局途中で交代することでなんとか納得はした。そしていよいよ出発。松田屋から坂を下ると岬海岸がある。その海岸沿いを走る。


さすがに車道は危ないな。海岸沿いになったら抜かす。べダルを漕いで下り坂を下りていく。


風が気持ちいい。こんな風に風を感じたのも久しぶり。楽しい。
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