ただ、君の隣にいたいだけ
家から徒歩5分の海岸まで無言で歩いた。少しだけ距離をあけて。亮輔さんは今から何を話すのかな。


いい話?それとも悪い話?海岸に下りていく手前の場所で缶ジュースを二本買って坂を下った。



「ごめんね、ショー終わりの疲れているときに話したいなんて言って」



「いえ」



波の音が聞こえる海岸の階段に隣同士で座る。カチャと開ける缶ジュースのタブ。汗をかいた後の炭酸は身体に染み渡った。



「・・・ずっと悩んでた。花菜ちゃんに告白される前からずっと。最初は引きこもりだって聞いてたからなんとか立ち直ってもらえたらって思って接してたけどいつしか自分でも花菜ちゃんに惹かれてるなって。でもその気持ちを伝えるつもりはなかったんだ」


「そう、だったんですか」



「まさか花菜ちゃんに告白されるなんて思わなかった。でも最初から答えは決めてた。自分の気持ちなんて関係なく」



遠い目をして亮輔さんが淡々と話す。惹かれてたって言われたのに喜べないのはどうしてだろう。これから言われることが決していいものではない気がするから。



「俺はいつか、絶対にテレビで活躍するスーツアクターになる。だから・・・」



「だから、気持ちには応えられないってことですよね。私の気持ちが重荷になる。優しい亮輔さんは私を大事にできないから最初から期待はさせない。そういうことですよね?」
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