ただ、君の隣にいたいだけ
「明菜はほら、夏樹くんが仕事人間で家事、育児もほとんど一人でしてたじゃない。うちに来ても店があるからそんなに構ってあげられないしね。まあ気分転換くらいは出来ただろうけど二人でいると、どうしても明海に当たっちゃうんだろうね。だから、亮輔さんがうちで明海を見てくれるって言ってくれて本当に良かったわ。お母さんのお店の負担も減ったしね。店を畳むことも考えてたけど本当に良かった」



お母さんは悪いわけじゃない。ただ、何も聞いていなかった私がポツリとそんなことを聞かされて自分だけが仲間はずれだった気がするだけ。


身内よりも他人のほうが関与して詳しいことがなんだか虚しい。


「おはよう、ございます」



「おはよう、亮輔くん。今日は花菜とお出かけなのよね?お弁当とお茶用意出来てるからね」



ダメだ。今、口を開いたらロクなこと言わない。わかってる。でも、振り向いたお母さんが私を見ずに亮輔さんに笑顔を向けているから耐えられなかった。


身内の私よりも他人の亮輔さんのほうが大事だと言われてるみたいで。私の居場所を奪われた、そんな気がして止まらなかった。
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