ただ、君の隣にいたいだけ
ファミリーパークを背中に駅の方に足を向ける。駅を越えて10分くらい歩いたところに私の実家がある。実家は小さなスポーツ店。


幸い隣は小学校、向かいには中学校があって文房具やハチマキなども置いてるためかなり繁盛させてはもらってる。友達には小学校も中学校も徒歩1分だからよく羨ましがられた。


高校もそんなに遠いわけではなかったから余計に短大は少し離れたかったのかもしれない。



天気がいいから歩くのも苦痛じゃない。もうすぐ実家だな。なんてほのぼのとした気持ちで歩いていた。角の公園を曲がったら中学校が見える。


懐かしいな。ふと公園のほうから声が聞こえたのでそちらに視線を向けるとバク転をしてる男の人が見えた。



目を奪われる身のこなし。ごくっと息を飲む。ダンサーか何かなのかもな。もう少し見ていたかったけれど気づかれる前に立ち去ることに決めた。




「ただいまー」



「おかえり花菜」




実家の引き戸を開けるとお母さんがニコニコしながらレジに立っていた。帰ってきたんだ、私。もう一人で苦しまなくていいんだ。居場所があるんだ。
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