ただ、君の隣にいたいだけ
「俺も全く興味なかった。むしろ、歌舞伎って何が面白いのかわかんなかったしな。でもさ、きっと今日行くと、今日見たものだけでも確実にその意識は変わるよ。だからデート楽しもう」



「・・・亮輔さんって、本当強引。私の意見なんて聞かずに全部自分で決めちゃって私をそこに巻き込むんだもん」



「俺さ、したいと思ったことはどうしてもしたいんだよ。我慢が効かない男なんだよ」



「ダメじゃないですか。それじゃどんなにカッコ良くてもモテませんよ」



「・・・モテなくていいよ。俺は子どもたちにモテればそれでいいから。あっ、でも・・・好きになったらトコトン一途だけど」



「そ、それが一番ですよ、一途、一途最高」



目が見れない。変な言葉しか返せない。だって全部それが私へのアピールだって自惚れかもしれないけれど思ってしまう。でも、そんなわけないよね。


私なんて思ってもらえるような可愛い女の子じゃない。亮輔さんの前でなんで特にいいところも見せてない。もっともっと自分を磨かなくちゃいけないよね。


髪の毛だって一応こっちに戻ってくる前に美容院には行ったけれど肩まであるというのにただ櫛で解いただけ。格好だってポロシャツワンピにスニーカー。デートだって言われていたのに普段と変わらない。


まあ赤のポロシャツワンピはお気に入りのものだけど。でも実はポロシャツが同じだったりする。まるで合わせたような感じ。亮輔さんは襟元がデニムっぽい黒地にイカリのイラストの入ったポロシャツに細身のスキニージーンズ。


やっぱりかっこいいな。でも、言わない。きっとみんなに言われ慣れてるから。
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