ただ、君の隣にいたいだけ
なんだろう、どうして私、手を離さないんだろう。どうしてこんなにドキドキしてるんだろう?どうして、この人のこと・・・好き、だと思うんだろう。


笑顔がこんなに素敵だなんて知らなかった。声がこんなに通るなんて知らなかった。細くて綺麗な指。吸い込まれるような強い眼差し。


苦手だと思ってたはずなのに。今はこの人の魅力的なところしか目に入らない。



「電車来たよ、乗ろうか?」



ああ、もう私、亮輔さんが好きなんだ。


初恋の人という思い出が蘇ってしまって苦手だった気持ちなんてあっという間に消えてしまった。手を繋いだまま乗り込む電車。


ゆっくりと動きだし、ファミリーパークの前を通る。観覧車が見えた瞬間、亮輔さんを見ると彼も私を見てくれていて視線がぶつかる。なんだかお互い照れ笑いをして通り過ぎていく観覧車を見つめていた。



歌舞伎座なんて近くにないのにどこに連れて行かれるのだろうとただ引かれる手に着いて行くと連れて来られた場所は映画館だった。電車を何度か乗り換えて少し遠出の映画館。



「歌舞伎なのに映画館で観るんですか?」

「そう。だって実際に観劇しようと思ったらお金が高いからね。ほらっ、俺チケット持ってるから行くよ」
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