ただ、君の隣にいたいだけ
近い距離に胸は高鳴るけれど少しだけ感じる心の距離になんだか切なくもなる。そういえばいつも亮輔さんから歩み寄ってきてくれていた。


最初はきついことも言うし、酷い人だと思っていた。でも、今はただ、ただこの人が恋しい。だからこんな風に距離を感じるの寂しい。



「・・・今日、歌舞伎を見せたいって思ってくれたのは戦隊モノと共通点があったからですよね?あの見栄を切るとかはヒーローが決めゼリフを言うところと同じとか」



少しだけ声を落として、でも暗くならないように問いかける。そうだよと返ってきた声はいつもの亮輔さんと変わらなくて少し安心した。



「元々、戦隊モノのヒーローは歌舞伎から来ているって言われているんだ。だからさ、そのルーツを見せたかった。最初から歌舞伎を見に行こうなんて言ったら花菜ちゃん、来てくれなさそうだったからさ」



「そうですね。歌舞伎を見に行こうって誘われたら行かなかったと思います。でも、亮輔さんなら強引にでも連れて行きそうですけどね」



「バレたか。花菜ちゃん、さっきはさ照れ臭くて言えなかったけどさ、泣いてくれたの嬉しかった」



「あっ、だ、だってそれは本当に良かったと思ったんです。亮輔さんがこうして元気で夢を追い続けることが出来ている。それが本当に奇跡的なことなんだなって」
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