ただ、君の隣にいたいだけ
信号が赤になり、急ブレーキの音が鳴り響く。少しずつ街の灯が見えてきてもうすぐ駅に着くはず。駅に着いたらもうこうやって亮輔さんに触れられないのかな。勇気を振り絞って軽く腕を回してみた。

「お、落ちたら困るんで、ちょっとの間だけこうさせてください」



「・・・うん、落ちるなよ」



片手でハンドルを握り、もう片方の手は回した私の腕に添えられ、もっとしがみついていていいからと引っ張られた。信号が青になってまた静かに亮輔さんは自転車を走らせる。


私って好きになったらすぐ相手に触れたくなる。でも、気持ちを気づかれたくないからあくまでも偶然を装って。そう、偶然を装って亮輔さんの背中にそっと身体を預けた。



駅に着いて、駐輪場に自転車を置く。途中で警察の人に見つかりそうに焦って二人で笑いあった。やっぱり距離を感じたのは気のせい?でも、やっぱり手は繋がない。


そうだよね。よく考えたら手を繋いでいたこと自体が不自然なこと。



「今日はありがとうございます。いろいろ聞けて嬉しかったです。今日、聞かなかったら私亮輔さんのイメージ・・・あんまり良くないままだったかも」



「なら話して良かった。それに花菜ちゃんがヒーローショーの仕事をやってみたいって言ってくれたのも良かった。明日、事務所に話してくるからさ」



「あっ、でも私、亮輔さんと一緒にはお仕事できないんですよね?」
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