ただ、君の隣にいたいだけ
ごちそうさまと食べ終わった亮輔さんがお風呂に入ってる間、私は洗い物をしながら3日前のことを思い出していた。



「ど、どうしたんですか?」



亮輔さんの腕の中、ドクドクと聞こえる彼の心音。私のと合わさって奏でているみたい。私の問いかけには答えず、我に返ると両手で私の肩を掴み身体を離した。

「・・・俺、何してんだ。ごめん、花菜ちゃん。ちょっと花菜ちゃんが泣いてくれたのが嬉しくて衝動的になっちゃった。気にしないで」



「気に、しちゃダメ・・・ですか?」



「・・・うん。気にしないでほしい」




どうして、気にしないでなんて言うの?そんな風に言うのなら最初からキスなんてしないで欲しかった。抱きしめたりなんてしないで欲しかった。


洗い物の手が止まる。水は出しっ放し。これ以上聞かないでってことなんだろうけれど聞きたいよ。どんなつもりで亮輔さんはあんなことしたの?



「花菜ちゃん、どうしたの?水、出しっぱなしだよ。しんどい?」



ぐるぐるとモヤモヤとした気持ちが駆け巡っていた私の隣に立って水道の蛇口を捻る彼からはお風呂上がりのいい匂いがした。


そんなことを思うなんて私、発情期のイヌか。
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