オトナになるまで待たないで
す…すごい。

プロのワザ、すごい。

鏡の中の私は、確かに私なんだけど。

「なっちゃん」じゃない。

この人は「海」だわ。



「髪が細いわねぇ。ちゃんと栄養取ってないでしょ」

「肌もですよ。マッサージしたから良くなったけど」

佐野さんたちに、次々と突っ込まれる。



それで思い出した。

店長に、朝昼晩と食べたものをメールで報告しないといけないんだった。

昼の牛丼をまだ報告していない。


まぁいいか。後で会うんだし。


「いやーん。変わったじゃない!」


鏡越しに、女の子が話しかけてきた。



驚くほど、綺麗な子だ。

スラッと背が高くて、ストレートの金髪が白い肌によく合っている。

妖精みたい……


「海はぁ、もっと磨けば光るんだからぁ…」


ん…!?


「まさかゴウ!?」

「ゴウは止めて!」

ピシャリと言われる。


「女子に戻った時は『ヒノ』って呼んで」

「ヒノ?」

「妃に乃で『妃乃』」

と、空中に字を書く。


なんだそりゃ。
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