オトナになるまで待たないで
まだ時間があったので、2人でその辺りをうろついた。

みんなが、振り返ってゴウを見ている。


あ、ゴウじゃないんだ。

妃乃なんだ。


もう身振り手振りまで変わっちゃって、話し方まで女の子そのものだ。


「家まで、それで帰るの?」

「今日はぁ親が出張だから、イベント行ってぇこれで帰るぅ」

「親は知らないの?」

「知ってる知ってる。もう、とっくヨお」

ふーん。


「海はぁ、そのまま帰るでしょオ?」

「うん。あ、思い出した。メイク落としないよ」

「あら。お母さんの使えばいいじゃナイ」

「うち、お母さんいないよ」

「は?」

妃乃の一角が崩れて、ゴウになった。



「お母さん、死んだよ」

「いつ!?」

「もう、とっくヨお」


私は妃乃の言葉をマネてやった。

ゴウが眉根を寄せる。
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