オトナになるまで待たないで
弁護士がノロノロと、書類を取り上げる。

「お互いの立場から意見を申し上げたわけですが、それではこの辺りで。ね?奥さん」


オバサンが独り言を装った声で漏らす。

「高校生のクセに化粧なんかして。不良娘が」


そうきたか。

もう、うんざりだ。


下を向いて、悔しさに耐えた。



「今、なんて言いました?」

低い声で店長が言う。


「何もないですよ。あーあ、政治が悪いの、政治がね。政治が悪いから世の中おかしくなるの」

「不良娘って言いましたよね?」


弁護士が少し慌てる。

「いや。奥さんも疲れてるから」

「自分の旦那が、この子に何やったか分かってんのか?」

「わざとやったわけじゃありませんよ」

「わざとじゃないで済むか!」


激高する店長を部長が、手で制した。
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