オトナになるまで待たないで
「名誉毀損だね」

静かに部長が言う。


弁護士が本格的に慌てる。

「イヤイヤイヤイヤ部長さん。そんなね…」

部長は、それを目で制した。


弁護士が、情けない声を上げる。

「ホラホラホラホラ!奥さーん。だから止めなさいって言ったでしょう」


部長は構わず続ける。

「ご意見があるなら、徹底的にやりましょうか?」


オバサンは、ふてくされたように言う。

「私は別に…悪いとは思ってますよ」

「悪いなんてもんじゃありません。ご主人は、事実上の犯罪者です」

「犯罪者なんて!うちの主人は、真っ当な人間なんですから!」

「坂下さんが訴訟を起こすと言えば、当社は喜んで防犯カメラの映像を提出いたします」


オバサンは、弛んだ頬を震わせた。

「こんな…こんな子供に…親も来ないような…」



「出よう」


部長が立ち上がった。


店長も立ち上がり、ノロノロしている私の脇から腕を入れて立ち上がらせる。

弁護士が追いすがる。
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