オトナになるまで待たないで
出来ないことがない人っているもんだ。

見事な豆腐料理を食べながら、私は感じ入っていた。



「関東の人には、薄味かもしれへんなぁ」

「いや。うまい…」

「『美味しい』」

「オイシイ」

「ホンマ?良かった」



ゴウは、すでに化粧を落とし、服装もごくシンプルなカットソーとジーンズ姿だ。



「明日は、すき焼きにしよ。関西のんは食べたことないやろ」

「なにそれ?薄味なの?」

「明日のお楽しみ。関西の食べたら、もう関東のなんか食べられへんで」


ゴウがニッコリ笑う。


こうやって見ると、本当に美少年だ。

輪郭や首筋、そこから肩に落ちるラインが綺麗で、何度も見てしまう。


「お変わり?」

「あ…うん。お変わり」


うふふと笑いながら、ご飯をよそいに行く。


私はまた首筋のラインを見た。

書道家が細い筆で書いたみたい。


ゴウが戻って来たので目をそらした。
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