オトナになるまで待たないで
「関西風も何も、すき焼きなんて、ここ数年食べてないよ」

照れ隠しに言った。

ゴウが、少し難しい顔をする。

「店長さんが言うてはったけど、お父さんと連絡つかへんて…。海外にでも居はるん?」

私は、するはずでなかった「お変わり」を掻きこんだ。



「お母さんが死んだ後、今度はお父さんが肝臓壊して、会社辞めちゃってさ。今は岩手で働いてる」


海外なんて、とんでもない。


「電話やらメールやら出来ひんの?」

「嫌いみたい。でもお盆には帰ってくるから……」


ため息をつく。


「なん?」

「仕送りがさ、不定期なんだよね。でもこうなったら、家賃だけでも定期的に振り込んでもらうようにしないと」



ゴウが気の毒そうに言う。

「そら頼まなあかんわ。言いにくいやろうけど」


ゴウは、分かってるなぁ。

言いにくい。

それなんだよね。

自分の親なんだけど、気を使うんだよね。
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