オトナになるまで待たないで
人の声で目が覚めた。
…そうだった。
ゴウの家に来たんだっけ。
「だけど、話しておいた方がいい」
低い男性の声がする。
ゴウのお父さんだと分かる。
戸惑ったようなゴウの声も聞こえた。
「話すって…唐突すぎない?」
「本当に友達なら、話していいはずだよ」
私は飛び起きた。
「痛っ」と肩を押さえる。
私のことを話してるみたいだ。
きっとお父さんは、出て行ってもらうように言ってるんだ。
パジャマ姿のまま、ゆっくりとドアを開ける。
「お早うございます」
腕の許す限り深々と頭を下げて、挨拶をする。
「お早うございます」
痩せた背の高い男性が言う。
ゴウにはあまり似ていない。
ただ、スタイルの良さはお父さん譲りだったようだ。
「私、あの…すぐに帰りますから…」
「何日でもいなさい」
帰って欲しいと思っている割には、きっぱりとした口調だ。
「でも…本当に…」
「何日でも居なさい。ひどい目にあったね。最近の年寄りは、なってないな」
静かな怒りを湛えた目をしている。
びっくり。
本気で、私のために怒ってくれてる?
頭が混乱。
「たぶん、3日くらいじゃないかなぁって…」
「君は、治るまで居るべき」
またもや、キッパリと言い切られた。
抵抗できない大物感。
圧倒される。
「じゃ」
そう聞こえた時には、お父さんの体はもうそこになかった。
「行ってらっしゃーい」
「行ってらっしゃい…」
思わず、この後に「~ませ。ご主人様」と付けたくなる気分。