オトナになるまで待たないで
準備完了の妃乃とネットカフェへ向かう。

私はエレベーターのボタンを押し、扉が開くと中へ入った。

妃乃も前髪を触りながら乗り込む。


全てが、ゴウよりワンテンポずれている気がする。

頭の中が、店長の事でいっぱいという感じ。

もう完全に女子だ。

「友達より男が大事」な女子だ。



つまらん。

妃乃なんか嫌い。

ついでに店長も嫌い。




「いらっしゃいませ~…ああ~~!夏海ちゃん大丈夫!?」

青木さんが出迎えてくれる。


続いて、田野畑くんが出て来た。

有名大学の学生だが、そのウザさには定評がある。



田野畑くんは、妃乃を見て、目を奪われたように固まった。

「な…なっちゃんの友達?」

「はい」

まだボーっとしている。


ひさびさ見たけど、お祭りで見る、変顔のお面に似てるな。

新規のお客さんが入ってきた。

田野畑くんは急にキビキビと動き出し、

いつもは面倒くさがる新規客のオペレーションを流暢に話し始めた。



青木さんが馬鹿にしたように鼻をならした。

「『すごい美人が来たらしい』って言ったら、『女の子は顔じゃないですよ。あくまで中身ですよ』って言いやがったんだよアイツ」

「それは、イタいっすね」


妃乃に言った。

「お金ないから、1時間で帰るよ?」

「ダメ!私が出すから!」

「はぁ!?だったら、家で時間潰して病院行ってから戻って来ようよ」



田野畑…もう「くん」はつけない…が、カウンターにもたれ掛ながら言う。


「別にタダでいいんじゃない?席は空いているんだし」


青木さんが、すかさず突っ込む。

「アンタにその権限ないから。つーか、アンタこの中で一番新人だから」


田野畑は鼻で笑った。

「なっちゃんとは2ヶ月しか違わないよ?」


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