オトナになるまで待たないで
ゴウは、お父さんの転勤に付いて行くことになった。

だけど、もう高校受験シーズンは終わっていた。

いつまた転勤するか分からないので、私立に入る気にもなれない。

そこで二次募集をしていた、うちの高校に入ったのだった。


「お父はんがな『卒業したら何をしてもいい。でも三年間だけ息子やってくれ』って」

ゴウは俯いたまま、まだ言いたいことがありそうだった。

私は先にそれを口にした。


「私が同じことになるんじゃないかって心配してんのね」

「…あのお父はんの場合、先に手を打つって言い方やねん」

気持ちが暗くなる。

でも出来るだけ、冷静に言った。


「私はゴウが女子で、妃乃だってことを知ってる。私は基本、女子が嫌い」

後は?

「私は時間もお金もない。ゴウと連んでるのは今だけで、普段はバイトしないといけない」

他には?

「生爪はぐとか、リスカとか、バイト出来なくなるじゃん!」


説得力なさすぎ…でも、もう出ない。

これ以上、出てこない。


ゴウが顔を上げた。
かすかに笑顔を浮かべている。


「ホンマ、男前やなぁ」

私は苦笑いして見せた。

こんな複雑な気持ちは初めてだ。


ゴウの笑顔にキュンとして、

ゴウの言葉にホッとして、

この状況にガッカリした…。

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