オトナになるまで待たないで
おお!

とっさに言っちゃったけど、なかなか説得力があるな。


自画自賛していると、妃乃がついてきていない。

振り返ると、棒のように突っ立っている。

「ホンマや…」

泣いている。

「ホンマやなぁ」

造花が生花になったようだった。

生花になった妃乃は、すぐに折れてしまいそうに見えた。



そうか。

消えまいとしていたのは、妃乃の方だったんだ。


「ごめんね」

妃乃の背に手を回した。

妃乃は、首を振る。

「ごめんね」

「なんで謝るんよ」

「私はゴウに守られてる。だから、妃乃は私が守るよ」


妃乃が声を上げて泣き出した。

喉から絞り出すような声で泣いた。


ゴウも妃乃も同じ人だ。

私が恋した、同じ人間だ。

そう何度も思った。

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