オトナになるまで待たないで
目を閉じたまま、声を絞り出した。

「声…声ちょっと…」

「運びますよー。せーのっ!」

体が浮く。

男性が、数人で運んでくれているらしい。


健康だけが取り柄だったのに、厄年かな。

薬、いっぱい貰ってきちゃった。風邪の時、いいかなって思って。



宿直室だろうか。

畳の部屋に運ばれた。

もう布団が引いてあって、そこへ横になる。



「救急車、呼ぶー?」


まさか…1ヶ月で二回も…冗談やめて……



「大丈夫です……」


ゴウが、手を握りしめてくれる。

「本当に大丈夫なん?無理したらあかんよ」



優しい声だ。

こんな状況なのに、ほんわかする。



その時、部屋の外から聞き覚えのある声がした。



「あ……入って行くのが見えたんで」



ゴウが握っていた手を離した。

「松井さんと違う!?」
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