オトナになるまで待たないで
改札口を出て、駅舎を振り返った。
「原宿って…久々来た」
「ホンマ~?」
人が多いし、暑い。
だらだらと歩きながら、竹下通りのゲートを通り越した。
「ここや」
「何が?」
「トンさんの家」
「ここ!?」
まだ五分も歩いていない。
古くさいけど、立派なヨーロッパ風のマンションだった。
「こんなとこに住む場所あるんだ…」
「便利やんなぁ」
妃乃は入り口に進むと、銀色の数字版を押した。
―はあ~い―
「妃乃でーす」
―ちょっと待ってちょ―
扉が開いた。
何か…イヤな予感がする。