オトナになるまで待たないで
テレビでもつけようか。

リモコンに手を伸ばした時、店長が言った。


「お前んとこ、親戚は?」

「いません」

「全然?」

「お父さんの方は、絶縁したんです。叔母さんと相続で揉めて」

「資産家だったんだ?」

「ぜんぜん。

お祖父ちゃんの家で同居してたんですけど、再開発の対象地域になって。

死んだ後もめたんです」



あの頃は、みんなが一緒に住んでたんだな。

今思えば、夢みたいだ。


「そこを売って、うちらはこっちに引っ越して来たんです」

「お母さんの方は?」

「お母さんは末っ子で、兄弟もう死んでるみたいですね」

「いとこは?」

私は首を傾げた。

「さぁ…分からないです」


沈黙がキツい。



お父さんは帰って来ない。

もう一度電話を掛けてみた。



…やっぱり出ない。

折り返しの電話もない。

メールも返してこない。
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