オトナになるまで待たないで
ホームに降りる。

正月らしい澄み切った寒さの中、向かい側のホームから福袋を手にした人たちが沢山降りてきた。


「福袋、買ってないなぁ」

「ウチ、買ったで」

「何の福袋?」

「服とぉ、下着やな」

「いいのあった?」

「まだちゃんと見てへんけど、網タイツが5足入っとったな!」

「いらな~~~い!」

「強盗でもせいっちゅうことかと思ったわ」


アナウンスが流れた。


「間もなく一番線に、特急・上野行きが8両編成で参ります。白線の内側に、下がってお待ちください」


ふと、怖くなった。


「一人で、こんな遠くまで行くの初めてだ」

「新幹線に乗る所まで着いてくし、大丈夫や」


私はうなずいた。

そうだ、大丈夫。顔上げて行こう。


顔を上げた瞬間だった。


あ…店長。
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