オトナになるまで待たないで
「どうにもならないって言われてもなぁ」
お父さんは、コーヒーの入った紙コップを揺らしながら言った。
「いないもんは、いないんだから」
そう。
いないもんは、いない。
「嫌なヤツだね」
「あんなもんだよ。機嫌さえ取っとけばいいんだ」
手術は、春になる予定だった。
それまで、働けないってことだ。
「春になると、この辺は綺麗だぞ。桜で一面がピンクになって」
「うん。楽しみに来るよ」
「本当に綺麗なんだよなぁ。あれは感動するよ」