オトナになるまで待たないで
「お、お早うございます」


店長は不機嫌そうに私を見下ろす。

「ああ」だか「おお」だか答えた。

この男、挨拶もできないのか。


でも夜勤明けか……

きっと疲れてるんだ。



思い直して、顔を下げる。

下げるとおでこが店長の胸についちゃうんだけど。

どうしたら……



「いいご身分だな」



へ…?と顔を上げる。



「家に帰れば飯があって、弁当まで持たせてもらって、ってか」

「はぁ!?」


思わず尖った声を出す。その声が車内に響き渡る。

店長がにらむ。


なんで私がにらまれるの!?



━━いいご身分ですか。うちの母、死にましたけど━━



それがこの車内に響き渡る場面を想像した。

三回想像したところで、止めておいた。

言って、どうなる?
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