オトナになるまで待たないで
見たことのない番号から、着信が入っていた。


「もしもし…」

―はい。こちらタナハシ設計です―


「私、あの…」


気づいた。




お父さんの会社だ。



―あ、あ、坂下さんの!?坂下さんの娘さん!?―


電話の主が、男性に代わり急に殺気を帯びた。


―坂下さんの娘さん?お父さんがね…落ち着いて聞いて欲しいんだけど…―



違う。


そんなわけない。


だって先週、別れたばっかりじゃない。


―急に具合が悪くなってね…―



そんなわけない。


お父さんは、ようやく自分自身に戻れたんだから。



―ごめんね…何て言っていいか…今ね、亡くなったんだよ―

悲鳴が漏れた。


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