オトナになるまで待たないで
気づくと、みんなアパートから離れて行った。
店長だけが、まだドアの前にいた。
「松井くん」
部長が呼んだ。
店長が私に近づいてきた。
「これ」
差し出した紙袋は、手土産のお菓子らしかった。
「持って帰って下さい」
「だけど…」
「私、甘い物嫌いなんです」
驚いた顔で私を見ている店長に、
「そこ、ゴミ捨て場ですよ」
と、アゴでしゃくってやった。
店長は、そちらへ歩き出した。
そして立ち止まると、衣類の束を持ち上げ、マジマジと見た。
「坂下…これ…」
私はさっさと鍵を開け、扉を閉めた。