オトナになるまで待たないで
立ち上がって、ドアを開けた。
突風が部屋を駆け抜けた。
目を開けると、店長の腕の中だった。
「坂下…ごめん。本当にごめん…」
もう本当に、どうでもいい。
なんて言うか…
意地張るだけの力がない。
「何もない…やっぱり引っ越すの?」
「…引っ越しますけど、すぐ近くですから」
「だけど…服…」
「自分の趣味でないものを捨てただけです」
「どこに引っ越すんだ?」
「浦浜です」
「それなら…今より俺の家に近い」
腕が緩められて、顔を上に向けられた。
「泊まってもいい?」
「布団、ありませんよ」
「いいよ。その辺で」