オトナになるまで待たないで
9…思い出を生きる
ほんの少し
私はハゼを釣っていた。
いつもの河口じゃなくて、
近所の小さな川だった。
お祖父ちゃんはいなくて、
日傘を差したお母さんがいた。
「いっぱいとれたよ」
と自慢した。
お母さんは、それを見て言った。
「こんなに、多すぎるよ」
「多すぎないよ!冷凍したっていいじゃん!」
お母さんは首を横に振った。
「少しでいいの。少しで」
だって…
お祖父ちゃんだって、
お父さんだって、
いっぱい食べるのに…