オトナになるまで待たないで
オバサンが言った。
「父に聞いたらね、覚えてるっていうんですよ。頭だけは、私たちよりシャンとしてますからね」
お爺さんが深々と頭を下げた。
私はお爺さんに、筒を見せた。
「今日は卒業式だったんで。一人だけ別でやってもらったんです」
オバサンが、涙目になった。
「あの新聞の子が…電話してきた子だなんて。
自分で自分のお葬式の準備をしてたなんて…そんな事、思いもしなかったもんだから…」
お爺さんが言った。
「お茶をお願いします。本堂は、冷えますから」
「やだわ。そうだ。失礼しますね」