オトナになるまで待たないで

オバサンが言った。

「父に聞いたらね、覚えてるっていうんですよ。頭だけは、私たちよりシャンとしてますからね」


お爺さんが深々と頭を下げた。

私はお爺さんに、筒を見せた。


「今日は卒業式だったんで。一人だけ別でやってもらったんです」


オバサンが、涙目になった。

「あの新聞の子が…電話してきた子だなんて。

自分で自分のお葬式の準備をしてたなんて…そんな事、思いもしなかったもんだから…」


お爺さんが言った。

「お茶をお願いします。本堂は、冷えますから」

「やだわ。そうだ。失礼しますね」
< 429 / 472 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop