オトナになるまで待たないで
赤ちゃんを抱っこさせて貰った。
暖かかった。
「なっちゃんの記憶が戻るのが怖い?」
トウマくんは首を横に振った。
「もう…覚悟してるよ」
「逆に…戻らないと、どうなると思う?」
「多分、ずっとこのまま…」
「多分ずっとこのまま。
恋もせず、結婚もせず、子供も産めず…」
赤ちゃんが泣き出した。
「私たちの知ってる、なっちゃんは火事で死んだってことになる…」
女の人に赤ちゃんを渡した。
また静かになった。
「亡くなったご両親のことを考えると、いたたまれないよ…」