オトナになるまで待たないで
━━うちに親戚なんかいない。2人だけで弔おう━━



市内にあるお寺から、ヨボヨボのお坊さんが来た。


お父さんが席を離れた隙に、私はお坊さんに言った。

言わずにいられなくて。


「お母さんは、子供だった」


長い沈黙が流れた。

耳が遠いのかと思った途端、お坊さんはおっとりした口調で言った。




「人間には、その方その方に見た目とは違う年齢がございます」


え……


「だって……母親なのに女子高生みたいなんて、アリなんですか?」


お坊さんは答えた。


「お母様は、ご自分のお選びになった年齢を生きられたのでしょう」





海に、お母さんの灰を紙に包んで流した。


そして決意した。

今日から、25歳を生きてやる。


< 54 / 472 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop