涙色の空をキミに。
そんな偽の笑顔を見たいわけじゃない。
「俺、まだ帰り道の途中だから、家に帰るね。夢空もお母さん心配するでしょう?俺と違って大切にしなきゃダメだよ。」
ニコニコと笑う琉空が、怖かった。
儚い幻のように、近づかなくて、消えてしまいそうで。
あの広い家に、1人で帰るの?
「夢空、また明日。」
立ち上がって私に微笑みかけてから、私に背中を向けた琉空に慌てて立って呼びかける。
「琉空っ…、待って…!!」
かなりの大声だったと思う。
静まりかえったこの公園に響くくらいには。
…それなのに、まるで何も聞こえないみたいに背中を向けたまま振り返らず歩いて行った琉空を見て、ふっと力が抜けたようにまたベンチに座り込んだ。
…君に、私の声は、届かない。
上を見上げると、夜を迎えかけた空が私を包み込む。
…私は、本当に、バカだ。
違った。琉空は、涙色の空が見えていたわけじゃない。
…私と、同じだ。
涙色の空が見たいと、望んでもがいている最中だ。