涙色の空をキミに。
──────────……
「…やっぱり、いた。」
翌日の放課後。
肩で息をしながら扉を開けると、その音で振り返った美少年と目が合う。
彩達には用事があるって先に帰ってもらった。
…琉空が、今日もまたこの美術室にいるんじゃないかって思ったから。
「夢空、どうしたの?」
いつもみたいに穏やかに微笑む琉空の質問には答えずに、部屋へ入る。
…本当嫌だ。今更すぎる。
琉空の笑顔の奥に、寂しさがいつもあったって今更気付いた。
「…琉空、昨日の話なんだけど。」
私がその言葉を発した途端、琉空から笑顔がサッと引いて美術室が沈黙に包まれる。
一気に空気が張り詰めたのを感じた。
「…言ったよね?夢空は何もしなくていい、って。」
「琉空だけが苦しむなんて嫌なの。私だって、力になりたい!」
座っている琉空が近くに立った私を見上げると、小さくため息をついたのが見えた。
…届かないかもしれない。でも、届いて欲しい。
恐怖を隠すように、ギュッと制服のスカートを握りしめる。
「…俺は、もう気にしてないんだ。母さんを確かに憎んでたけどもう今はその気持ちすらないよ。椿さんだってただの伯母って立場なのに、ほんの数年でも俺を預かってくれただけで感謝してるんだ。だから、苦しんでなんてない。」
…ほら、また、近づかない。
私が手を伸ばしても、のらりと避けられてしまう。