涙色の空をキミに。
「俺が8年間どうやって過ごしてきたか分かるの?…椿さんと一緒に住んでた時も、楽しかったよ幸せだった、でも毎日本当の母じゃないって心のどこかじゃいつも気を遣ってた!!俺は、…8年前に心から笑う方法を失くしたんだ。」
苦しそうに、辛そうに顔を歪めて話す琉空に何も声をかけられなくて、ただただ唖然と見つめる。
…琉空はいつも楽しそうに笑っているイメージだったから、そんなこと思っていたなんて知らなかった。
「…椿さんが出て行って、分かったんだ。俺は誰にも好かれちゃいけないって。好かれてもどうせ嫌われるんだって。…1人で住んでた方がずっと楽。…余計に掻き回さないで。」
ポツリポツリ、と話す琉空に胸がもっともっと苦しくなる。
痛かった。傷だらけで必死に1人で立っているような琉空を見るのが。
どんなに助けたいと思っても、琉空は私の手を払いのけて頑なに握ろうとしない。
…いざとなったら、頼るって言ったじゃん。
どうして頼ってくれないの?何で私じゃダメなの?
「私はっ…、琉空と一緒に分かち合いたいの!琉空が私を変えてくれたように、私だって琉空を支えたい!」
思ったよりも大声になってしまった私の訴えは、いとも簡単に琉空の吐いたため息によって掻き消される。
くしゃ、とあの柔らかい髪を握りしめてチラッとこっちを向いた。
「俺は今の自分を変わりたいとも変えたいとも思ってない。あの時の夢空とは違う。」
…あの時の、私。
変えたかった。変わりたかった。何より自分自身が。
「あれは本人が強く望んだからこそ変わったんだ。俺が何も望んでない今、何も変わらないよ。」
冷めた声が私の周りの空気を振動させる。
違う、琉空からそんな言葉を聞きたくない。
何も変わらないって諦めるんじゃなくて変われるって信じ続けたい。
そっちの方がずっと良いって琉空といたからこそ思えたのに。