涙色の空をキミに。
求めるのは桃色。
「──… 手帳でも書いてあった通り、母さんは旧姓を名乗って、…俺とは関係ない生活を送ってる可能性が高いと思うんだ。」
「…お母さんの旧姓…って?」
「和泉。母さんの名前、和泉 百合(いずみ ゆり)だよ。…椿さんも多分まだ独身だと思うからきっと同じ名字。和泉 椿(いずみ つばき)。」
和泉、百合さん…。
心の中でその名前を呟いてみる。
……あの後、お互いに一旦落ち着いて冷静になったところで、
琉空のお母さん達を一緒に探すために、美術室で向き合って座りながら情報を教えてもらっている。
「椿さんは、結構上の役職だから実際に仕事が忙しいんだ。…この前、初めて椿さんの会社に行ったんだけど、受付で忙しいからって断られたよ。…まあ、忙しくなくても俺の名前を出した時点で取り合ってくれないと思うけど。」
寂しさを含ませた笑みを見せる琉空に、肩をすくめる。
…でも、どうして椿さんまで琉空を置いていってしまったんだろう。
琉空の話だと百合さんも椿さんも琉空を置いていく人にも捨てる人にも思えないのに。
眉を寄せて笑顔をつくる琉空の頭にそっと手を乗せた。
「…見つけようね、絶対。」
まだまだ子供な私達に何か出来るかなんてわかんない。
でも、絶対に見つけてみせる。
そのままグシャグシャ、頭を撫でると「子供扱いやめて」って若干怒られたけど、
嬉しそうに口元を緩めていた琉空が乱れた髪から見えて。
ふっと私の心まで和らいだ気がした。