涙色の空をキミに。
黄色が差し込む世界。
────────────────……
「…高っ…。」
琉空の家と劣らない高級なマンションを見上げて、言葉を漏らす。
隣にいる琉空はいつもと違って神妙な顔をしていた。
『存在自体、忘れているのよ。』
こびりついたように木霊する声が頭から離れない。
……椿さんから事実を聞いた日、琉空に会いたいって言われたけれど言葉を失うくらい唖然としていた私はそれを断った。
冷静な状態でお互いにいられるわけがなかったし。
後日、琉空を連れて椿さんの家へ訪れるのを条件に帰ってもらったんだ。
…その後、頭を整理して勇気を出して琉空に話した。
どこか虚ろな目をしてしまって、呆然と無表情になってしまった琉空がどんな気持ちかがわからなくて。
椿さんの家へ尋ねる今日までずっと、光のない瞳だった。
「…琉空、本当に大丈夫?」
「…大丈夫だよ。きっとね。」
エレベーターに乗り込みながら小さく問いかけると、私を見ずに前を向いたままそう答える。
…大丈夫なはずが、ない。
これから椿さんに会う。
…そして椿さんの家に住んでいる琉空のお母さんの百合さんに会う。
……正常でいられるはずがないじゃん。