涙色の空をキミに。
変わり始める橙。
「…大丈夫?夢空。」
「うん、大丈夫だよ。お母さんと結衣にも何も言ってないから、…帰らないと。」
心配そうな琉空が私の顔を覗き込みながら聞くから、笑顔で答える。
あの後、涙が止まるまで隣にいて背中を撫でてくれて、すごくすごく安心した。
きっとお母さんは私のことなんか少しも心配してなくて、ただただ怒鳴り散らされると思うと、帰るのは憂鬱だけど、
琉空に話したらそれだけで頑張ろう、って思えて。
それだけで、また希望が見つかったから。
「…ありがとう、琉空。連れてきてくれて、話を聞いてくれて。」
「ううん、俺は大したこと何もしてないよ。」
そう言った琉空に、微笑んで玄関にある靴に足を入れる。
結構長い間お邪魔させてもらっちゃったな…。
私の家まで送ってく、って言った琉空に大丈夫だって遠慮はしたけれど、やっぱり押し通されてしまった。
何だろ、優しいのに意外と強引なんだなあ…、なんて。
玄関の扉を開けて外へ歩き出した琉空に続く。
いつの間にか土砂降りの雨は止んでいて、いつも以上に透き通った空気を感じる。
「…お邪魔しました。」
一瞬振り返ってペコっと礼をすると、後ろから笑われた。
「なんで笑うの。」
「ふはっ、いや、律儀だなあって。」
「…礼儀ってそんなもんでしょ。」
"今家の中誰もいないのに"なんて楽しそうに笑う琉空に、ムッとした顔をする。
…お邪魔しましたくらい言うものでしょ、普通!
「お母さんとかにもちゃんとありがとうございましたって伝えといてねっ!」
「…うん、わかった。」
躍起になって早口で言うと、静かに笑った琉空が見えた。
……お家に上げてもらったのは事実だし、お礼は言わなくちゃね。