片思い連鎖 -軽音部×恋-
高校に入って間も無いため、疲れと不安ばかりだったが、今日は妙にテンションが高い。
そう。
これから、憧れの軽音部員として活動できるからだ。
記念すべき一日目。先輩に目をつけられないようにしないと!
と言っていたのもつかの間。
「あれ、まさかあの子軽音部の子?」
「小柄で地味だから似合わないよねー」
初っ端から、先輩に叩かれたー!
チビでちょっと癖毛で眼鏡で地味で...。
自分の容姿は、凄く嫌いだった。
似合わないと分かってても、ギターを持ってステージに立つのが夢だった。
のに、いきなり痛い攻撃が。
確かに周りの一年生は、同い年に思えないほど大人っぽかったり、個性的な子ばかりだ。
だから逆に地味で冴えない私が目立つのか。
「あれ、君ギター担当?」
小さい体を更に小さくしながら暗い気持ちでいると、光のように眩しい先輩が声をかけてきた。
「は、はい。そうです」
金髪頭でアーバンショートヘアの男性だった。
整った顔をしていて、まるで王子様みたい。
「へー! あっ、早速ギター持ってきた感じ? 見せて見せてー!」
初対面とは思えない程のフレンドリーさ。
確かに女の子慣れしてモテそうな雰囲気はバンバンに漂っている。
周りの一年生の女の子達が羨ましそうにこちらを見つめる中、私はケースからギターを出す。
その瞬間、先輩の目が輝きを増した。
「すっげ! これ俺が好きなメーカーのやつじゃん! しかも限定品だし! かっけー!」
拝むようにギターを撫でる先輩。
そのギターは、私には似合わない赤のエレキギター。
そうと分かっていながら、一目惚れしたこれを買わないわけにはいかなかった。
「私には似合わないんですけど、かっこよくてつい買ってしまったんです」
「似合わない? 一回持ってみて」
意外なことに、先輩は否定しなかった。
普通の人なら「あー、確かに。ギターって柄じゃないよね」なんて言うのに。
ギターを持つと、先輩は微笑んで、
「え! めっちゃ似合うよ? 印象明るく見えるし可愛い! 似合う似合う!」
「えっ、えっ、え...ええっ⁉︎」
驚いた。
似合う、可愛い...今まで縁の無かった言葉。
お世辞かもしれないけど、凄く嬉しかった。
すると、先輩は笑って私の頭を撫でてくれた。
色々と頭が混乱して顔が真っ赤になる。
「名前、何て言うの?」
「あっ、田辺 園子です。よろしくお願いします」
「園子ちゃんね! 俺は、橋本 大斗(やまと)。園子ちゃん小柄だから、ギターとか手届きにくい部分あるだろうけど、俺が教えるから、これからよろしく」
そう言って大斗先輩は、満面の笑顔でピースサインを送った。
もう駄目だ。
手は震えてるし、顔は熱いし、まともに目を合わせられない。
こんなに男性に優しくされたのは、生まれて初めて。
かっこよすぎる。
こんな地味な私でも、恋していいですか。