冷酷な彼は孤独な獣医
「あの婆さん、コイツに感謝してただろ。

だからあれでいい」


「先生、でも飼い主さんよりも取り乱すなんて、

あってはならない事じゃないですか?」


桐島さんの言葉に、龍は厳しい顔をする。


「誰が決めた」


「えっ……」


「コイツはずっと、此処に来る飼い主やそのペット達と近い距離で接してきてたんだ。


飼い主やペットの事を思えば、悲しい気持ちになって当然だ。


それに、あの婆さんだって、コイツが自分と同じ気持ちになってくれた事で、

悲しみを一人で背負わないで済んだんだ」



龍………



まさか龍が、そんな風に言ってくれるとは思わなかった。

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