冷酷な彼は孤独な獣医
話し終わると、あたしの目からは一気に涙が流れ出した。


そんなあたしを、龍は無表情で見ている。



やっぱりそんなの……

あたしの勝手な気持ち……だよね………



あたしは必死で泣くのをやめ、涙を拭くと顔を上げた。


「……ごめん、あたし勝手な…」


「変なヤツだなっ……お前……」


龍は静かな声でそう言うと、

そっとあたしを抱きしめる。


「………龍?」


「言ってる事がめちゃくちゃだ」


龍は、あたしの両肩を掴むと顔を覗き込む。


龍に見つめられ全身が熱くなり、

鼓動が早くなる。


「な…に…?」


目を合わせていられず下を向くと、

龍は突然、あたしの両頬をつねる。


「痛いっ!なにするの!」


「お前だって最初の頃は俺に、

最低獣医だの最悪獣医だの言ってただろ!」


< 462 / 650 >

この作品をシェア

pagetop