冷酷な彼は孤独な獣医
「えっ?あぁ……それは……」


「ったく!」


龍はあたしの頬を引っ張る。


「痛いよっ!」


「アハハッ変な顔だなぁ!」


龍は笑いながら手を離すとキッチンへ行く。


「龍がやったんでしょ!!」


あたしがそう言うと龍は立ち止まり、

背中を向けたままで話す。


「悪かったな。怒ったりして」


「えっ……うん……」


そして龍は料理を始めた。





龍はいつだってそうなんだ。


いっぱい不安な気持ちにさせて、

いっぱい悲しい気持ちにさせて、

いっぱい泣かせていっぱい傷つける癖に、

こうして簡単にあたしの気持ちを落ち着かせる。


苦しかった気持ちなんて、

思い出せないくらいきれいになくなって、

そしてあたしは、もっと龍を好きになってしまうんだ。
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