冷酷な彼は孤独な獣医
龍は椅子から立ち上がり、

あたしの頭に手を乗せると鼻で笑う。


「フッ」


「なによ…しょうがないでしょ…勝手に鳴っちゃ…」


「似合ってるよ、この髪型。それにこの服も」


「えっ…」


龍は笑顔であたしを見ると、

キッチンへ行った。



龍の言葉に胸がドキドキして、

もうなにも考えられなくなってしまう。


あたしをこんな風にさせる龍は、

やっぱりずるい!





キッチンで料理をする龍は、

すっかりいつもの龍で、なんだかあたしばかり空回りしていて、

それが少し悔しくて……



「龍!」


「ん?」


「バーカ!」


突然そう言ったあたしに、

龍は余裕の笑顔で言葉を返す。


「ガキはよく、覚えたての悪い言葉を意味もなく使いたがるらしいけど、

お前もそれか?」


「違うから!」



でも、あたしが好きになった人はこういう人で、

きっとあたしは、何度龍に傷つけられても、

何度泣かされても、それでも龍の事が好きなんだ。

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