冷酷な彼は孤独な獣医
龍の言葉に、兄は完全にキレた。


「テメェーこの野郎!!」


そして拳を振り上げる。



やめてーーーーっ!!



あたしはとっさに、

まな板の上の包丁を手に取ると龍の兄に向けた。


「龍を殴ったら、あなたを殺す!!!!」


今までに出した事がないくらい大きな声で叫んだ瞬間、

手と足が震える。


心臓が壊れそうなくらいバクバクして、

もの凄い恐怖感に襲われる。


それでもあたしは、龍の兄をにらみつけ、

震える手に力を込めた。



龍の兄は、鋭い目であたしを見ると、

龍から手を離す。


そしてソファーを思い切り蹴ると、

なにも言わず部屋を出て行った。

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