冷酷な彼は孤独な獣医
それは、あたしが知らないあたしで、

少しだけ自分が怖くなった。


「そんな事言われても、

あたしだって自分があんな事をするなんて思ってもみなかったよ。

気が付いたらっていうか……とっさにっていうか……

龍のお兄ちゃん、龍の事を殴ろうとしたから……」



下を向くあたしを、龍はそっと抱き寄せる。




「まったく………

こんな事されたらお前の事、

………離せなくなるだろ」



えっ…




ゆっくり顔を上げると、龍は切ない笑顔であたしを見ていて……

それは、今までに見た事がない龍の顔。












「………龍?」











呟くあたしの頬に、龍の手がやさしく触れる。


そして、唇が静かに動く───
















「お前の事が好きだ」




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